含鉄泉とは

含鉄泉の特徴

温泉には、無色透明のもの以外に黄金色のもの、茶褐色のものなどがあります。
「含鉄泉(がんてつせん)」は鉄のサビと同じ茶褐色の温泉で、「鉄泉(てっせん)」とも呼ばれています。
名前を見てわかるとおり、鉄分が豊富に含まれているのが含鉄泉の特徴で、定義としては温泉水1kg中に鉄イオンが20mg以上含まれているものが含鉄泉と呼ばれます。

含鉄泉は空気に触れると酸化して茶褐色になりますが、これは鉄が錆びるのと同じプロセスです。
鉄分が含まれているため、含鉄泉に入浴すると造血作用が期待できます。
冷え性や貧血、月経困難症に効き目があり、更年期障害や子宮発育不全にも良いとされているため、「婦人の湯」とも呼ばれています。

含鉄泉は、以前は炭酸鉄泉と緑礬泉(りょくばんせん)の2種類に分けられていましたが、最近では一つの範疇に分類されています。
炭酸鉄泉は炭酸水素塩系の温泉で、緑礬泉のほうは硫酸塩系の性質を持っています。

含鉄泉が体に与える影響と注意点

含鉄泉の中でも飲用にできるものは、鉄の中でも消化吸収が良いことで知られています。
ただし、含鉄泉の多くは飲めないことも多いので、必ず保健所の飲泉許可を受けている含鉄泉を飲むようにしましょう。
含鉄泉に限っての禁忌というのは特にありませんが、熱があるときや著しく衰弱している場合、肺や肝臓の重い病気などがある人は入浴を控えなければなりません。

含鉄泉で有名な温泉地

間欠泉で有名な温泉地としては、滋賀県の長浜温泉があります。
特に秘境とも呼ばれる須賀谷温泉は、飛鳥の時代からすでに開湯していたと言われています。
信長の妹であるお市の方が湯治したという伝説のある同温泉は、戦国時代の武将が傷を治すために通った場所でもあり、神経痛や筋肉痛にもよく効くことで人気があります。

泉質はヒドロ炭酸鉄泉で、日帰り入浴も可です。
食事も充実しており、露天風呂から上がった後は近江牛のしゃぶしゃぶや甘鯛の彩蒸しあんかけ、近江牛の握り寿司などを堪能することができます。
アクセスは、東京から車で行けば東名・名神を使って約5時間、大阪からは名神高速で約1時間30分の行程です。

新幹線で行く場合には東京から名古屋までひかり号で2時間、名古屋から米原まではこだま号で30分です。
日本で最も古い兵庫県の有馬温泉も、含鉄泉の一つです。
人間が温泉を掘る技術を持っていなかった時代に自然に湧き出ていた温泉で、大已貴命(おおなむちのみこと)と少彦名命(すくなひこなのみこと)の二柱の神が発見したのが有馬温泉の始まりと言われています。
第34代の舒明天皇(593〜641年)や第36代孝徳天皇(596〜654年)も湯治に通っていたという記録が残っています。